- 24時間シートと言われても何のことかわからない
- 個別ケアやユニットケアをする上で、必要あるのか?
- 作ろうと思って取り掛かるも、中々進めていくことができない
- 作っただけで終わってしまっている
現代の介護現場では、個々の入居者に合わせた質の高いケアを提供することが求められています。
この課題解決の鍵を握るのが、「24時間シート」の効果的な作成と活用です。
この記事を読むことでわかる事
- 24時間シートの基本的な概念から詳しい作成方法
- 日々の介護業務での具体的な活用方法
- チーム内での効果的な情報共有の重要性
- 実際に遭遇する可能性のある課題とその解決策
この記事を読むメリットは多岐にわたります。まず、24時間シートの作成スキルを身につけることで、入居者一人ひとりのニーズに応じた個別ケアの質を格段に向上させることができます。また、チームでの情報共有と連携を強化することにより、介護サービス全体の効率と効果を高めることが期待できます。この記事を通して、介護の質を向上させるための具体的な手法と、その実践に向けた理解を深めましょう。
24時間シートとは
介護の現場で、一人ひとりの入居者に対して質の高い個別ケアを提供するためには、その人の生活全体を理解することが不可欠です。
ここで重要な役割を果たすのが「24時間シート」です。では、24時間シートとは具体的に何を指し、なぜこれが介護における個別ケアを実現する上で重要なのでしょうか?
24時間シートの定義
24時間シートとは、入居者の1日の暮らし(起床、食事、排泄、入浴、レクリエーション、就寝など)を時間帯ごとに記録し、その人の生活リズムや好み、ニーズ、健康状態を詳細に把握するためのツールです。このシートを利用することで、介護職員は入居者一人ひとりの日常生活を可視化し、個別ケアプランの策定や日々のケアの質を向上させることができます。
なぜ24時間シートが重要なの?
- 介護の現場では、入居者一人ひとりが持つ独自の生活リズムや個性を尊重することが求められる
- 24時間シートは、入居者の日常生活の様々な側面を詳細に把握することを可能にし、それに基づいて個別化されたケアプランを作成するための基礎データを提供
- 認知症の入居者のケアでは、その人の好みや生活歴を理解し、安心感を提供することが極めて重要!
24時間シートはチーム内での情報共有や特に新人職員や異動してきた職員の指導にも根拠を持ってできるので役立ちます。
介護はチームで行う作業であり、入居者に関する正確な情報がチームメンバー間で共有されていることが、質の高いケアを提供する上で不可欠です。
【24時間シートの基本構造】
24時間シートは通常、時間帯(朝、昼、夜など)ごとに区切られ、それぞれの時間帯での入居者の活動やニーズを記録します。具体的には、以下のような情報が含まれます。
- 起床・就寝の時間
- 食事(内容、時間、好み、嚥下状態など)
- 排泄(回数、時間、介助の必要性など)
- 入浴(頻度、好みの時間帯、特別な注意点など)
- レクリエーションや活動(参加した活動、興味のあること、社会的交流の機会など)
- 健康状態や医療的なニーズ(服薬のスケジュール、治療の必要性など)
これにより、入居者一人ひとりに合ったより良いケアの提供が可能となります。
【介護職】個別ケアを新人介護員にもわかりやすく解説【ユニットケア】
24時間シートの大まかな作成方法
24時間シートは、入居者の1日24時間の暮らしを詳細に記録し、その情報を基に個別ケアを計画・実施するための重要なツールです。
時間 | 生活リズム | 意向・好み | 自分でできること | サポートの必要なこと |
6:30
~ 7:30 |
目覚める | 目覚めてもすぐに布団から出られない | 10分くらいしてから起き上がる | 起きれない時、呼ぶので手伝って欲しい |
電気をつける | 電気の紐を柵に結んでおきたい | 自分のタイミングでつけたい | 時々解けるので結び直して欲しい | |
新聞を読む | 〇〇新聞を読んでいる | 自分のタイミングで読む | 机の上に置いておいて欲しい | |
着替え | 毎日着替えたい | 服の準備と上のみ自分でできる | 下は届かないので手伝って欲しい | |
トイレ | 着替えた後にトイレに行きたい | 車椅子で自分で行くことができる | 自分で行える | |
洗面
歯磨き 髭剃り |
暖かいお湯で行いたい
〇〇粉を使いたい 電気シェーバーで毎日剃りたい |
全て自分でできる | 剃り残しがあるのでその時は手伝って欲しい。 | |
7:40 | リビングにいく | リビングまで自走 | 時々ひっかかって動けなくなるので、その時は手伝って欲しい |
情報収集
- 【入居者との関わり】
直接的な観察に加え、入居者との日常的な対話を通じて、彼らの好みや価値観、生活の歴史について深く理解することが重要です。
(例)彼らが若い頃に好んでいた活動、生活の中で大切にしているルーティンや習慣など、細かな情報が個別ケアの質を大きく左右します。
- 【技術的なアプローチ】
情報収集は、デジタルツールやアプリを活用して効率化することも可能です。
特に、ウェアラブルデバイスを用いた活動量の記録や、健康状態のモニタリングなどは、24時間シートに記載する情報の精度を高めます。
記録項目の具体例
- 【食事の詳細】 食事に関しては、ただ何を食べたかだけでなく…
- 食事の時間
- 食べる速度
- 好みの食材や嫌いな食材
- 使用する食器の種類(特別な介助用具が必要かどうかも含む)
- 食事の際の気分や反応などを記録します。
- 【活動とレクリエーション】
入居者が日中にどのような活動に参加したか?それに対する反応や興味の程度を詳細に記録します。
特に、新しい活動に挑戦した際の様子や、特定の活動で見せる熱意などは、今後のケアプランに役立つ貴重な情報です。
- 【睡眠パターン】
睡眠は健康状態に直結する重要な要素です。
就寝と起床の時間だけでなく、夜間の覚醒回数、睡眠の質(深い睡眠が取れているか等)、睡眠を妨げる要因(痛み、不安、騒音など)についても記録します。
テンプレートの工夫
- 【カスタマイズ可能なテンプレート】
24時間シートは、入居者の個々のニーズに応じてカスタマイズ可能なテンプレートであるべきです。
(例)特定の医療条件を持つ入居者の場合、その条件に関連する項目を追加することで、より細かなケアを計画できます。
- 【ビジュアルエイドの活用】
テキスト情報だけでなく、色分けやアイコン、グラフィックを用いることで、情報の視認性を高め、介護職員が迅速に情報を把握できるようにします。
定期的なレビューと更新
- 【フィードバックの組み込み:】
24時間シートは、入居者や家族からのフィードバックを定期的に収集しそれをもとに更新することが重要です。
これにより、入居者の変化に柔軟に対応し、常に最適なケアを提供する体制を維持できます。
- 【インタラクティブなプラットフォーム】
デジタル化された24時間シートを活用することで、リアルタイムでの更新やチーム間での情報共有が容易になります。
また、入居者や家族が直接情報を追加できるプラットフォームを検討することも、精度の高いケアにつながります。
これらの詳細なアプローチを取り入れることで、入居者一人ひとりに最適化された個別ケアを実現し、介護の質を大きく向上させることができます。
24時間シート「朝の時間」の作成方法
起床
起床には個性が出るので個別ケアにとってはとても重要
- 【時間の記録】
入居者が通常起床する時間を記録します。早朝や遅めの起床など、個人のリズムに合わせた記録が必要です。
-
- 起床時間のデータをとる
- 「〇〇時までに終わらせなきゃ」といった意識に繋がってしまうシフトを見直す
- 職員間のルールを作る
- 業務を見直す
- 【起床時の様子】
起床時の気分や体調(例: 目覚めが良い、起床時に不安を感じる等)を観察し、記録します。
身支度・身だしなみ
- 【衣服の選択】
入居者がどのように衣服を選ぶか、または選択に介助が必要かを24時間シートに入れてきます。
入居前の習慣を知ることが大事
-
- 好みの服を選んでもらうサポート
- 見守りながら必要な時に必要なサポートをする
- 場所により着る服の配慮
※着替えたくない人には着替えのアプローチをしていき、その上で「なぜ着替えたくないのか?」を確認する。
- 寝やすい
- 快適
- 面倒 等
(例)パジャマでリビングに出る時などは他の入居者もいるので配慮が必要
- カーディガンをはおる
- 食事の場所を変える
- パジャマとわからないような工夫
- 【身だしなみのケア】
- 髪の手入れ
- 顔の洗浄
- ひげ剃り など
身だしなみに関する日常のルーティンと、それに対する個別の介助の必要性を詳細に24時間シートに記録します。
口腔ケア
- 【口腔ケアの実施】
歯磨きや義歯のケアなど、口腔ケアの実施方法と頻度を記録します。また、口腔ケアに対する入居者の反応や特別なニーズも入れていきます。
(例) 口内炎がある、特定の歯磨き粉が必要等も記録します。
排泄
- 【排泄の管理】
朝の排泄の習慣(時間、頻度、介助の必要性)を記録します。使用する排泄支援具(例: トイレットチェア、オムツ等)の情報も含めます。
- 【排泄時の様子】
排泄時の入居者の様子や特別な注意が必要な健康上の問題(例: 便秘傾向がある、尿失禁がある等)を記録します。
朝の時間の活動は、入居者が一日を快適に過ごすための基盤を築きます。
各活動に関する具体的な情報を記録することは、入居者の健康管理と生活の質の向上に直接貢献します
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24時間シートの活用方法
このツールは、個別ケアプランの策定、日々のケアの質の向上、そしてチーム内での効果的な情報共有に役立ちます。
以下に、24時間シートの活用方法をさらに詳細に解説します。
個別ケアプランの策定
24時間シートは、入居者一人ひとりの日常生活の詳細な情報を提供します。これに基づき、介護職員は以下のような個別ケアプランを策定できます。
- 【生活リズムに合わせたケア】
入居者の自然な生活リズムに合わせて、起床、食事、レクリエーションの時間を設定します。これにより、入居者はより快適に日々を過ごすことができます。
- 【個人の好みに基づく活動の選択】
入居者の興味や好みに合わせて、参加するレクリエーションや活動を選びます。これは、社会的な交流を促進し、精神的な健康を支えることにもつながります。
- 【特定のニーズに対応した介助】
食事の介助、排泄ケア、入浴介助など、入居者の特定のニーズに合わせた介助プランを策定します。これにより、安全かつ尊厳を守ったケアが可能になります。
日々のケアの質の向上
24時間シートを活用することで、日々のケアの質を向上させることができます。
- 【リアルタイムでのニーズの把握】
24時間シートを定期的に更新することで、入居者のニーズや状態の変化に迅速に対応できます。これにより、状況に応じた適切なケアを提供することが可能になります。
- 【予防ケアの実施】
24時間シートに記録された情報を分析することで、潜在的な健康リスクを早期に特定し、予防ケアを実施できます。
(例)睡眠パターンの変化から健康上の問題を予測し、早期に対処することが可能です。
チームでの共有と連携
24時間シートは、介護チーム内での情報共有にも非常に役立ちます。
- 【情報の一元化】
24時間シートをチーム内で共有することで、入居者に関する情報が一元化され、介護職員全員が最新の情報に基づいてケアを行うことができます。
- 【コミュニケーションの促進】
24時間シートを定期的にレビューし、チームミーティングで議論することで、チーム内のコミュニケーションが促進されます。これにより、多職種間での連携が強化され、総合的なケアプランの策定が可能になります。
それは、入居者に対する深い理解、日々のケアの質の向上、そしてチームワークの強化に寄与する重要なプロセスです。
介護の現場において、24時間シートは個別ケアを実現し、介護サービスの質を高めるための不可欠なツールと言えるでしょう
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チームでの共有と連携
24時間シートの有効活用は、単に個々のケアプランを策定するだけでなく、介護チーム全体の連携とコミュニケーションを強化する上でも極めて重要です。
ここでは、チームでの共有と連携を促進するための具体的な方法について詳細に説明します。
情報共有のプラットフォーム
- 【デジタルツールの活用】
チーム内での情報共有を効率化するためには、デジタル化された24時間シートやケア管理システムの活用が有効です。これらのツールを用いることで、リアルタイムでの情報更新とアクセスが可能になり、場所や時間に関わらずチームメンバーが最新の情報に基づいたケアを提供できます。
- 【アクセス権の管理】
デジタルツールを使用する際は、個人情報保護の観点から、アクセス権の管理にも注意を払う必要があります。適切なセキュリティ対策を講じることで、情報の安全性を保ちつつ効果的に共有することができます。
チームミーティングの活用
- 【定期的な情報共有会議】
24時間シートに基づく情報共有は、定期的に開催されるチームミーティングで行うと効果的です。これにより、入居者の状態やニーズの変化に対するチーム全体の理解を深め、ケアプランの見直しや改善策の検討を共同で行うことができます。
- 【多職種間の連携】
介護チームは看護師、介護士、リハビリテーションスタッフ、社会福祉士など、さまざまな専門職で構成されています。チームミーティングでは、これら多職種の視点を統合し、入居者にとって最適なケアプランを策定します。
フィードバックと改善
- 【フィードバックの積極的な収集】
入居者やその家族からのフィードバックは、ケアの質を向上させるための貴重な情報源です。チーム内でこれらのフィードバックを共有し、必要に応じてケアプランの調整を行います。
- 【継続的な改善プロセス】
24時間シートに基づいたケアプランは、一度作成したら終わりではありません。定期的な評価と見直しを通じて、継続的な改善プロセスを実施します。これにより、入居者の生活の質の向上を常に追求します。
チームでの共有と連携は、高品質なケアを提供する上で不可欠な要素です。
このプロセスを通じて、介護サービスの質の向上を目指しましょう
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課題と解決策
24時間シートの導入と活用は、介護の質を大きく向上させる一方で、実際の運用においてはさまざまな課題に直面することがあります。
ここでは、これらの課題に対処するための解決策を探っていきます。
情報収集の困難性
- 課題
入居者一人ひとりの日常生活に関する詳細な情報を収集することは、時間がかかり労力を要する作業です。特に、コミュニケーションが困難な入居者の場合、正確な情報を把握することが難しい場合があります。
- 解決策
入居者や家族との信頼関係の構築を最優先に考え、定期的な対話を通じて情報を収集します。また、介護職員間での観察結果を共有することで、情報収集の効率を高めます。デジタルツールやセンサー技術を活用することで、非言語的なコミュニケーションや活動パターンからも情報を収集できます。
情報収集の障壁
- 課題
チーム内での情報共有がうまくいかない場合、一貫性のあるケアの提供が難しくなります。特に、シフト制で働く環境では、重要な情報が伝達されないことがあります。
- 解決策
デジタル化されたケア管理システムを導入し、24時間シートを含む介護記録をチーム内でリアルタイムに共有します。定期的なミーティングやブリーフィングを設け、口頭での情報共有も行います。また、重要情報のハイライトやアラート機能を設けることで、情報の見逃しを防ぎます。
継続的な更新と管理の負担
- 課題
24時間シートは定期的に更新する必要がありますが、これが追加の作業負担となり得ます。特に、多くの入居者を抱える施設では、その管理が困難になることがあります。
- 解決策
タスクの自動化やデジタルツールの活用により、記録の管理と更新プロセスを効率化します。例えば、入居者の活動や健康状態に関するデータを自動的に記録し、分析するシステムの導入です。また、チーム内での責任分担を明確にし、定期的な更新作業を複数の職員で分担します。
プライバシーとセキュリティ
- 課題
入居者のプライベートな情報を含む24時間シートの取り扱いには、プライバシーとセキュリティが重要な課題となります。
- 解決策
データ保護に関する法律や規則を遵守し、職員に対するプライバシー保護と情報セキュリティの研修を定期的に実施します。デジタルデータの場合は、アクセス制御、暗号化、定期的なセキュリティ監査を行うことで、情報の安全性を確保します。
24時間シートの導入と活用におけるこれらの課題は、適切な解決策を講じることで克服可能です。
まとめ
このシートを効果的に作成し活用することで、入居者一人ひとりの個別ニーズに応じた高品質なケアを実現することが可能になります。
本記事では、24時間シートの基本構造、作成方法、活用方法、チームでの共有と連携、そして課題と解決策について詳細に解説しました。ここで挙げたポイントを再度理解し、介護現場での24時間シートの価値を再確認しましょう。
24時間シートの価値の再確認
- 個別ニーズへの対応: 24時間シートにより、入居者一人ひとりの生活パターン、好み、ニーズを詳細に把握し、それに基づいた個別ケアを実施することができます。
- ケアの質の向上: 日々のケアプランの策定や介護サービスの提供において、24時間シートは重要な情報源となります。これにより、ケアの質が向上し、入居者の満足度も高まります。
- チームワークの強化: 24時間シートの共有は、介護チーム内の情報共有を促進し、多職種間の連携を強化します。これにより、チーム全体として一貫した高品質なケアを提供することが可能になります。
【実践への呼びかけ】
24時間シートの作成と活用は、介護現場における重要な取り組みです。このツールを最大限に活用するためには、継続的な努力とチーム内の協力が必要です。
介護職員はもちろん、管理者や関連するすべてのスタッフが、24時間シートの重要性を理解し、その作成と活用に積極的に取り組むことが求められます。
今回の記事が、24時間シートの効果的な作成と活用に向けた一歩となり、介護現場での個別ケアの実現とケアの質の向上に貢献することを願っています。
介護サービスの質を高めるための取り組みは、入居者の生活の質の向上だけでなく、働く職員のやりがいにもつながります。共に学び、成長し、より良い介護を目指しましょう